愛心館理事長就任のご挨拶

社会医療法人社団愛心館 理事長 岡本洋

 2022年4月1日、私は高橋順一郎前理事長から後任を託され、社会医療法人社団愛心館理事長に就任しました。身に余る重責ですが、前理事長はじめ諸先輩が築き上げてこられた実績・信頼を損なわぬよう、さらに、新体制を少しでも発展できるよう、微力ながら、地域医療発展のため、愛心館のため 、患者さんのために誠心誠意、努力する所存です。

 新体制後も、患者中心の医療と社会への貢献を基本理念とし、「地域社会と共に健康で『安心』な生活を享受し、『信頼』 のおける質の高い医療を提供すること」に何ら変わりはありません。ご承知の通り、当法人は札幌市内に病院・診療所3ヶ所、介護老人保健施設1ヶ所、訪問看護ステーション/居宅介護支援事業所3ヶ所を運営しています。法人の中核となる愛心メモリアル病院は1986年心臓血管外科専門病院としてスタート、2015年社会医療法人となり、全国的にも知名度の高い循環器急性期病院です。71床と小規模ながら2003年透析センター31床を付設、2014年眼科センター、2016年にHybrid手術室、2018年循環器内科・心臓リハビリセンター、2019年腎臓内科及び皮膚科、2021年糖尿病内科を併設し、循環器疾患の統合的診療体制がほぼ整いました。循環器専門医研修施設・心臓血管外科専門施設・CVIT連携施設でもあります。専門的・統合的・網羅的な心臓・血管病治療を行うことができ、しかも、機敏で即応性ある対応が可能な点が基幹病院とは大きく異なる利点と考えます。グループ診療制で、病棟回診は毎日交代で医師・看護師・薬剤師・事務職員とともに行い、その場で薬剤調整・検査指示・退院調整を行います。多職種協働をいち早く取り入れたシステムです。

 今後、循環器疾患の統合的診療体制を発展させるために何をすべきか。2005年の第5次医療制度改革に端を発する地域医療連携は、脳卒中/急性心筋梗塞診療体制は進展しましたが、心不全ことに高齢者心不全患者の連携は進んでいませんでした。私は、2018年愛心メモリアル病院院長就任以来、患者さんにとっても、医療者にとっても 効率的な医療連携を進める必要があると考え、北海道大学病院及び地域機関との医療連携を深めてきました。私どもは患者さんご自身、ご家族とも相談しながら、患者お一人お一人に相応しい最適な高度先進・個別化医療を追求します。その一つとして、北海道大学病院循環器内科/循環器外科あるいは地域医療機関と協働で『心不全診療センター』 を設置し、一貫性・連続性のある急性期/慢性期/回復期/終末期心不全診療を行います。全国に先駆けたモデル事業を目指します。

 医療の原点は、目の前の患者さんに寄り添い、最大限の努力をすることです。しかし、それぞれの患者さんの置かれている状況は皆さん異なります。相手の状況に同情・共感・共鳴する「シンパシー:Sympathy」が基本となりますが、誠実に、かつ、精いっぱいの力で「診て療(いや)す」という行為が必要になります。医療者は創造性を働かせ、相手の状況や意図を理解し、自らに移入する「エンパシー:Empathy」が必要となります。「必要は発明の母」という諺があります。医学的・科学的な発明だけでなく、患者さん目線に立ち、患者さんに必要で有用なことを「エンパシー:Empathy」し、そのため組織形態・設備や組織運営を改変することが重要と考えます。

 患者さんを診療する際、循環器専門病院だから循環器疾患だけ診れば良いというものではありません。Heart、TechniqueそしてPhysical Strength、「心・技・体」を尽くして、自分ができることをやらなければなりません。一方、私たちは「神」ではありません。心臓病診療の定期検査で癌が見つかる機会も数多くあります。その場合、信頼のおける他の医療機関にお願いをします。また、癌と心臓病の両者を扱う腫瘍循環器という新しい診療分野もでき、癌化学療法や手術の際の心臓に関する評価をとご紹介頂く機会も増えてきました。

 当然ですが、患者さんはお一人お一人環境 も人格も考え方も病状も異なります。補助人工心臓や心臓移植が必要な患者さんもいれば、重症な糖尿病、腎臓病や肝臓病、あるいは、ご高齢で、脳卒中、重度の認知症や譫妄状態を併せ持つ方もおられます。同じ診断や治療で良いとは限りません。個別化医療が必要な所以でもありますし、高度先進医療から在宅管理まで幅広い対応が必要で、しかも、疾患のステージ毎、患者さん毎に対応は異なります。とても、単一の医療機関だけで解決できる問題ではないと考えます。そのため強い医療連携が必要となります。

 私たちは「良質な医療」「心優しい医療」「信頼される医療」「安心できる医療」を目指しています。超高齢化社会を迎えた今、私たち自身、極めて忙しい環境の中、各スタッフはそれぞれの立場で、日夜たゆまぬ努力をしています。敬意を表するとともに大変心強く感じます。私の役目は、当法人の目指すべき姿をスタッフの皆さんと共有し、一枚岩となって突き進んでいくことと心得ています。

 今後、当法人内外の関連施設との連携をより一層強固なものとし、電子カルテシステム ・医療機器・設備の更改、DX(Digital Transformation)を取り入れたIT環境整備、施設認定、回復期/地域包括ケア病床見直し、在宅・訪問介護との相互介入、医療/介護連携を推し進めます。また、法的/財務的にも透明化・適正化を目指すために、弁護士・会計士に参画頂き、社会医療法人としての進化を推し進めます。
何よりも、患者さん目線に立ち、患者さんのため、社会のため、闘ってまいります。
今後とも皆様方と連携・連帯しながら、診療に全身全霊で取り組んで参りたいと思います。引き続きご指導ご鞭撻いただきますよう、より一層のご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。